知財自在

全ての知財部員の抱える課題の解決、知財部員向けのお役立ち情報を提供するブログです

企業知財部に関する疑問・悩み相談② 「できる」知財部はどう見分けたらいいか?

 皆さん、こんにちは。

 私は、ブログの書き方を変えて2記事目の、企業に勤務する弁理士です(笑)。

 

 さて前回予告しました通り、今後は企業知財に関する疑問・悩みに相談する形で記事を書いていきたいと思っています。

 2回目の今日のお題は、”「できる」知財部はどう見分けたらいいか?”、です。

 

 最近、あるご縁があって、理工系の修士過程に通う学生さんと話をする機会がありました。彼は、理工系には珍しく(?)知財に興味があり、できれば新卒から知財部に行きたいとの希望を持っていました。本日のお題は、彼と話をした際に出た質問のうちの1つです。

 つまり、せっかく新卒時代という大事な時期を過ごすんだから、知財部に行くなら自分の実力が大きくアップする、「できる」知財部に行きたい、と考えての質問だったんでしょう。

 一介の中年知財部員としては、知財に興味を持ってくれて嬉しい反面、何やら複雑な心持ちでした(笑)。まあ、それはさておき、私がその時、彼に回答した内容をご紹介したいと思います。

 

    f:id:mmkkoo95:20211229183119j:plain

 

 見るべきポイントは以下の3つと思っています。

 

1.出願書類の願書に【代理人】欄がない企業

2.【代理人】欄に自社の弁理士を記載している企業

3.知財関連の係争の当事者として新聞等で名前をみる企業

 

 順番に説明します。

1.出願書類の願書に【代理人】欄がない企業

 知財関係者にとっては自明の話ですが、特許出願等は必ず弁理士に依頼しないといけないかと言うとそんなことはありません。弁理士は代理人に過ぎないので、代理人を立てずに発明者自らが出願することももちろん可能です。この場合、代理人がいないので、願書には【代理人】の欄はありません(ちなみに特許出願等の願書をどこで調べればいいかについては本記事では詳細は述べませんが、WebでJ-PlatPatなどを使えば調べることができます)。

 そうすると、ある企業の特許出願の願書をいくつか見たとき、それらに【代理人】の記載がないとはどう言うことでしょうか?、そう、その企業が代理人を立ててない、つまり社内で出願書類を作成していると言うことです(もちろん一部は特許事務所等に依頼して、一部は社内で作成する方針の企業も多くあります)。

 このようなスタイルを”明細書の内製”と言います。そして内製している会社は、客観的に正しいか否かは別として、自社の知財活動に自信を持っている企業が多いです。すなわち、「事業内容やその技術をあまり分かっていない事務所なんかに任せられない。俺たちでやる」と言う意気込みで自社で出願書類を作成し、権利化のための中間処理などにも対応していると思われます。よってこのような企業は「できる」知財部を有する、と言える可能性があります。

 

2.【代理人】欄に自社の弁理士を記載している企業

 これも1.と同様、内製している企業を確認するためのものです。願書の【代理人】欄に記載の弁理士の指名を、「弁理士ナビ」等で調べて、当該弁理士の所属を確認して見てください。

 確認した勤務先が出願人の企業である場合、すなわち自社の社内弁理士を【代理人】欄に記載している場合も、1.と同様、内製している企業である可能性が高いです。1.の場合は発明者自らが明細書を書いているような企業に多く、2.の場合は、知財部が明細書を作成している場合が多いと推定しますが、いずれにせよ事務所に外注せず自社で進めていることに変わりはありません。

 よって1.と同様、これらの企業も「できる」知財部を有していると思われます。

 

3.知財関連の係争の当事者として新聞等で名前をきく企業

 以前の記事(転職を考えている知財部員が候補企業を見る際のポイント - 知財自在)

にも書きましたが、係争の経験、すなわち防御側として警告状が届いたので非侵害主張を検討した、また他社の問題特許の無害化のため異議申立や無効理由を検討した、あるいは攻撃側として自社特許に基づく侵害主張ができそうな企業を探したり、実際に警告状を送付・ライセンス交渉をした、と言った経験は、企業の知財部員の実力を大きく向上させます。

 よって過去に新聞等で取り上げられた知財関連紛争で名前をきく企業の知財部は、相当の実力を備えている可能性が高いです。

 

 上記の1.〜3.はいずれも外部から確認できる情報のみを元に、「できる」知財部かどうかを確認可能な手段となります。新卒の方で知財部への配属を希望されている方はもちろん、転職希望の方なども、ぜひ上記のポイントでチェックしてもらえればと思います。

 

 改めまして本日のまとめを以下に示します。

 

<本日のまとめ>

1.出願書類の願書に【代理人】欄がない企業

2.【代理人】欄に自社の弁理士を記載している企業

3.知財関連の係争の当事者として新聞等で名前をきく企業

 

 本日は、以上です。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。