知財自在

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転職を考えている知財部員が候補企業を見る際のポイント

私は、40代前半の時、企業知財部に在籍しながら転職活動を進めた弁理士です。

 

振り返ると、当時は研究開発部門から知財部に異動して4,5年であったことから、まだまだ経験が浅く、知財業務自体を一括りに捉えていました。

すなわち転職候補の求人票を見る際も、研究所や事業部など現場の知財部と、本社の知財部を区別して考えていなかったり、ライセンスも出願も同じ知財業務なのだからそこから得られるスキルもそれほど変わらない、といった誤った認識を持っていました。

しかし自らも転職をしたり、他社知財部の方と交流する中で、転職を検討している知財部員が転職先(他社の知財部)について、事前にチェックしておいた方がいいと思える点がより見えてきました。

そこで、以前の記事(転職を考える知財部員が今の職場でやっておくべきこと - 知財自在)では今の職場でやっておくべきことを述べたのですが、今回は、転職する際に候補企業を見るべきポイントについて述べたいと思います。

 

本日の内容は、以下の3点です。

1.本社の知財か、現場(研究所や事業部)の知財担当か?

2.  ライセンス業務の機会があるか?

3.  どの程度、業務が分割されているか?

以下、詳細を説明します。

 

1.本社の知財か、現場(研究所や事業部)の知財担当か?

いわゆる大企業は、本社の知財部門(本社知財)以外に、各事業部・研究所にも知財担当者あるいは知財部門(現場知財)を置いている場合があります。

本社知財は本社の一部門になりますので、勤務地は都内など街中が多く、現場知財は、メーカーであれば、研究所や事業所のあるところになりますのでの田舎が多いです。

また業務でいうと、本社知財は、「戦略をやるんだ」といっている企業は多いです。戦略といえば聞こえはいいですが、それが具体的にはどんなものかは曖昧で、実質は管理業務のみ、すなわち代理人の評価や、全社統一の知財業務手順の策定などを行なっているところが多いと思われます。よって業務はそれほど大変でなく、残業も少ない、ワークライフバランスを取りやすい部門です。よって育児や介護などの事情を抱えている人にはいいのですが、実務スキルを身に付けたい若い人には、向かないように思えます。

一方、現場知財は、研究者や事業部の技術者が提出した発明案を権利化する、というのがメイン業務になります。よって発明発掘と出願、特許調査、中間処理など典型的な知財業務を一通り学べるのが最大のメリットです。特に事務所出身者は発明者と直接議論し合う機会が多くなる点に魅力を感じる人が多いようです。

勤務時間については、期末などの出願が集中する時期を除けば残業もそれほど多くなく自分の時間も確保しやすいと思います。この点は本社知財と大差ありません。一方、現場に近い分、発明者に対して嫌なこと(先行文献と差別化が難しく権利化断念、事業に貢献しないので年金支払い停止など)も直接言わなければならないなど、精神的にタフな状況がより多い点が懸念点です。

 

2.ライセンス業務の機会があるかないか?

 別の記事(知財部員の社内での地位向上 - 知財自在)でも書きましたが、ライセンス業務は稀少性が高い上、技術スキルもさることながら知財スキルの重要性も高く、知財部員が発明者と対等以上に活躍できる数少ない場面です。また活動の結果、他社からライセンス料を取れたとなると会社の利益に直接貢献しますし、自分たちが苦労して権利化した特許がお金になる手応えを感じ、知財部員、発明者とも大いに士気が上がります。

 このように実りの多い業務(とはいうものの、ライセンス料を取ってくるのは極めて難しいですが)なので、転職を考えるのであれば、ライセンス業務に関与できる知財部を選択すべきです。

 大企業の本社知財であればライセンス部門は必ずあると思います。ただし企業によってはライセンス業務は法務部門の仕事となり、知財部門は関与できなくなっている場合もありますので注意が必要です。

 また大手メーカー系列の知財関係会社も最近よく見かけますが、これらの会社のほとんどは出願・調査業務しかやっておらず、ライセンスは親会社の知財部門・法務部門が直接対応する場合が多いです。よってこれらの企業への転職もよく考える必要があります。

 

3. どの程度、業務が分割されているか?

 候補企業の中で、知財業務がどの程度細かく部門分けされているか?は、非常に重要な要素です。大まかに分けても、出願、調査、ライセンスと3つの部門があると思いますが、これら3つの業務は密接に関連し合っているので、各々の経験が別の業務に活きます。よってこれら全てを自分で担当できるところが望ましいです。

 比較的経験の浅い人であれば、中規模のメーカー知財はオススメです(中規模以下のところは知財部がないところが多い)。これらの企業では、知財部の規模も小さく人的リソースの余裕もないため、1人の知財部員が多くの役目をこなす必要があります。よってうまくいくと出願、調査、ライセンスの全てを経験する可能です。

 また大手企業であれば、業務単位でなく技術単位で担当者を配置する知財部があります。この場合も、特定の技術において、出願・調査・ライセンスと全ての経験ができる点が、業務単位で区切られた会社よりも恵まれていると思います。

 

<本日のまとめ>

本日は、転職を考える知財部員が、自分の市場価値をあげる業務経験を積める会社かどうか?の視点から、候補企業のチェックポイントとして、以下の3点をあげました。

 

1.本社の知財か、現場(研究所や事業部)の知財担当か?

2.  ライセンス業務の機会があるか?

3.  どの程度、業務が分割されているか?

 

特に若い人の場合は、年収も気になるとは思いますが、自分の将来にとって役に立つ経験が積めるか?という観点から、上記を意識して求人票チェック、面接での質問をしてもらえればと思います。

 

本日は以上です。